2015年面白かった本 トップ5

2016年の年も明けてしまいましたが、昨年読んだ本の中で特に面白かった書籍たちを一行コメントつきで紹介していきます。それぞれ、画像がリンクになっていますので興味があればポチってみてください。



1位 『アジアのなかの戦国大名』 鹿毛敏夫 (吉川弘文館)

2015年のベストバイの書籍はこちらです。大友宗麟を中心とした九州・西国の大名たちの活躍をアジアの経済史の中から描いた作品です。日本では戦国時代ですが、世界史的には「大航海時代」のこの時代、九州の大名たちも国内の天下統一だとか領土拡大などよりも国際貿易による利益の拡大を目指していたことが良く分かり、旧来の戦国大名観を大きく変えてくれる一冊です。
大友宗麟が偽造した勘合を作って明国に貿易に行き、バレたらそのまま密貿易船に切り替わるといった強かさは非常に面白いです。さらに、「九州国王」として今のタイやカンボジアといった国々と国交を結んでいたというのは驚きです。当時の貿易を「南蛮貿易」と呼びましたが、改めて史料中心に見ていくと、確かに欧州各国との直接交易よりも、東南アジアの南蛮諸国との交易のほうが密度が濃かったことがわかります。グローバル化が叫ばれている現代ビジネスマンにはぜひとも読んで欲しい一冊です。




2位 『日本近世の歴史6 明治維新』 青山忠正 (吉川弘文館)


こちらは幕末から明治までの概観を説明した一冊です。こういったシリーズものは高校レベルの日本史の知識があれば素直に読み進められますので、歴史を勉強しなおすには最適です。
この一冊での自分の新発見は、日米通称修好条約について幕府首脳は積極的に締結を行おうとしていたということです。僕自身が定説である「幕府は開国したくなかったが、列強の武力の前に開国せざるを得なかった」というものを無批判に信じていました。しかしながら、これは安政の大獄によって条約締結に関与した首脳陣が排斥された後の、井伊直弼を中心とした保守派の見解であり、蘭癖とあだ名された堀田正睦はじめとした当時の老中たちは、これを幕府再建の契機として積極的な開国に乗り出そうとしていたというのは目からうろこの内容でした。






3位 『戦争の日本史19 日清戦争』 原田敬一 (吉川弘文館)

これまた吉川弘文館の一冊になります。日本の近代史研究において第二次世界大戦や日露戦争が非常に多くの研究をなされてきた反面、日清戦争は戦史としてあまり研究されてこなかった経緯があり、本書は日清戦争を改めて整理しています。日本がはじめて行った全面的な対外戦争は戦闘よりもロジスティクスに課題が多発ししたが良く分かります。朝鮮半島での戦闘を行うためには、内地からの物資の運搬が不可欠であり、鉄道網などが未発達な当時においては、それは人力でした。しかし、戦時下において軍隊の物資の輸送する仕事を請け負うという人々は決して多くなく、また全うな仕事にありつけない人が請け負っていたので、物資の横流しや横領が発生して物資輸送に支障をきたすどころか、日本軍のフリをして地元住民への略奪を働き、さらに兵站にリスクをもたらす始末だったとか。
戦争というと、兵器と兵器がぶつかり合う戦場のイメージが強いですが、兵站こそが戦争の勝敗を左右するということを改めて強く認識させてくれます。



4位 『中国の歴史7 中国の思想と宗教の奔流』 小島毅 (講談社)


中国でも大ヒットしているとニュースになっている講談社の『中国の歴史』シリーズです。本書は「唐宋革命」をキーワードに宋代を中心に主に思想・宗教面から中国史を説明しています。
一般には知られていませんが、唐とその前の隋は「関朧集団」と呼ばれる元々は鮮卑という騎馬民族をルーツとする人々が支配階級であった王朝です。そのため、唐代というとシルクロードが喚起されるように非常に民族色豊かな国家となっていました。一方で、その後を次いだ統一王朝の宋は漢民族の国家でありながら、国土の多くを異民族に支配された状況であり、最終的には華南地域のみを統治する地域国家となっていました。この、南宋期の中華文明に対する危機感が思想面において稀有な発展を促すことになった点に着目し、この時期に漢民族という民族の萌芽が生まれてきたことがよく記されています。また、その後のモンゴル支配を受けて途絶した漢民族の文化が海を隔てた日本には残存しており、明代以降の「ルネサンス」に貢献したというのは非常に面白い話です。



5位 『歴史学のフロンティア』 秋田茂 桃木至朗 (阪大リーブル)


これは大学院の課題図書で読んだ一冊になります。歴史学の「いま」を簡単に知ることが出来、非常に助かりました。特に大坂の発展と町奉行・郡代との関係性は、これまであまり意識してこなかった都市の発展と行政区分の見直しという視点を僕にインプットしてくれることになりました。他にもアメリカ、イギリス、中国と日本史に限らない歴史学研究の最前線を知ることができるので、これから歴史学を学ぼうとしている学生にぴったりな一冊です。

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